あるラーメン屋でのバイト2
営業中にレジごと持っていかれた事件から、数ヶ月が経ったある日。
夜中12時過ぎに、社長が店に来た。
威厳の無い、オーラの無い、なんとも社長らしくない人物だったんですが、その社長がビックリする一言を放ちます。
「今日で、この店を閉めるから、今から荷物を撤収するぞ!」
わけがわからない、一言から長い一日が始まりました。
まるで夜逃げの様に突然店が閉まり、一夜にして中の荷物が無くなったので、常連の人は驚いたと思います。
一緒に働いていた女の子は、放心状態で備品の洗い物をしているし、自分はというとタンタンと机やら、鍋やら、重たいものを運んでいる。
状況を飲み込めなかった自分は、早く家に帰ることしか考えてなかった。
冷蔵庫とか、やたらと重たいので、何をやらされてるんだ俺は、、、って痛感しだした頃。
備品を整理してた女の子が、いなくなっていたので、探しに二階の方へ上がっていくと、驚いたことに、めちゃくちゃ泣いている。
それを見て、明日からここで働けないって事が急に、リアルに感じられた。
トラックに運び込んだ荷物を違う店まで運ぶと言うので、トラックに乗り込み別の店に。
その店で、荷物を下ろして駐車場に運ぶ。
むちゃくちゃキツイ作業をしながら、無性に悲しくなってきた。
駐車場に並べ終わった荷物にビニールシートをかけて、作業終了。
すると社長が違う店の方にきて、私にこう言った。
「明日からこっちで働いてくれ」
家からバイクで20分かかる店だったので迷ったけど、このままやめるのが嫌だったので、やりましょうと返事。
新たな店でスタートを切ったわけなんですが、前の店を凌ぐ暇な店で、何もやる事がないので、ひたすら掃除をする日々。
ここら辺で、ある異変がはっきりと感じられる様になる。
最初に気づいたのは、ビールが入荷されなくなった時です。
それまで、毎週決まった日に届いていたモノがこなくなった。
おかしいな?と思っていたら、給料の支払いが遅れ始めました。
催促しても、返事がないので、どんどん遅れる。
2ヶ月遅れの入金になり、ついには3ヶ月も遅れる様になった。
3ヶ月も遅れると、40万ちかくのお金が未払いなので、こっちはヒヤヒヤしてました。
で、運命の日、、、。
移ってきたその店も、突然の閉店。
自分が入ってない日に閉められたので、その日のウチに連絡が入った。
一番心配した事は、給料がもらえるかどうかということで、40万ちかくの未払いの回収に動く事になる。
催促しまくると、遠くにある店のレジから10万抜いてくれと指示があり、抜きに行く。
なんで、わしがわざわざ回収に行くんじゃい!と腹がたちましたが、もらえるだけマシということで、がっつり取りに行く。
間髪を入れずに、催促しまくると同じ様な指示があり、また抜きに行く。
そして、また。
で、30万の回収に成功したものの、残り7万5千円の回収に苦労した。
半年が経っても、用意が出来ないと言うので、これはもう無理かなと諦めかけたその時、一緒に働いていたおばちゃんが、店の売上金をちょくちょく、抜いていてくれたので、7万円の回収に成功。
もちろんもらう時は、社長に確認を取りました。
んで、残り5千円は回収出来ずに、ついに、、、。
そうです、ついに、、、倒産しました。
最初にこのラーメン屋で、働き始めたのが18歳の時、まさかこの若さで、苦しい会社の状況を近くで体験するとは思っていなかったので、本当に記憶に残っている。
ハチャメチャなこのラーメン屋チェーンは、私にいろいろなモノを残してくれました。
数年後当時の仲間で集まった時は、ありえないエピソードばかりなので、盛り上がりました。
世界は、どんな事があっても、次へと進んで行くから、バラバラになった当時の仲間も、いろいろ変わってました。
うまく言えないけど、このラーメン屋倒産劇は、自分の財産で、、、後悔はしたくないし、失敗もしたくないと強く思う原動力に、なってます。
きっと、捕まった犯人や社長も、時間が進んでなる様になっているでしょう。
うん、やっぱ後悔も失敗もしたくない。